クランについて

  クランとは共通の祖先を持つ血縁集団の事を指し、言語や住むべき土地、神話の内容に関する権利を決定しており、先に述べたトーテムもこの祖先たちが旅路の途中で生み出してきたものである。日本風に解釈するなれば神に当たるのがこの祖先たちで、精霊に値するのがトーテムである。婚姻に関しても大いに関わってくる事柄であるが、クランも半族によって区分されている。

  ヨォルゴ族は男性祖先に出自を辿るため、父系出自集団であり、ドゥア半族の最も重要な祖先はジャンカウォルと二人の姉妹、イリチャ半族ではバラマとライジュンの二人の男で、この祖先達が旅路で人々を産み、動物に名前をつけ、歌や儀礼を人々に与えていった。ヨォルゴ全体では約50個のクランがあると言われているが共通の祖先を持つクラン同士は共同で儀式を行うことになっている。

  これらのようにアーネムランドだけでもヨォルゴ、ブララ、ナカラ、グナビジ、グニバラン、マウン、イワイジャ、グニウィング、グングルゴニ、ダンボン、レンバルガ、ンガルクブン、ヌングブユ、ンガンディ、ンガラカン、ワネンディニャクワと16部族あり、それぞれに神話にまつわる半族、クラン、トーテムがあり、儀礼、歌がある。

  さながらアボリジニ社会とは社会自体が曼荼羅のように複雑で神聖であり、個人個人はその曼荼羅の構成員である。つまり神話の時代の祖先や精霊たちを神聖視し、崇拝しているが実はそれは自分達を含めた社会自体を崇拝している事でもあるのだ。そしてこの高度に発達した宗教観がパプアニューギニアやインドネシア、その他地域からから伝わって来たであろう農耕文化を受け入れず狩猟採集を守り続けてきた理由の1つだろう。

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